毎日ごはん作れなくてごめんね
食べることが好きな私にとって、一番心が満たされることは、
「人が作ってくれた、手作りのごはんをお腹いっぱいに食べること」である。
どんなにイライラしていても、落ち込んでいても、
手作りのごはんがあれば、なんとなく気持ちが落ち着いてくる。
多分、妹も同じなんだと思う。
だからこそ、一緒に暮らした、3年の間に、
それほど手作りごはんを作ってあげられなかったことに、
申し訳なさを感じている。
年の離れた私たち姉妹は、いろいろあって、数年間、別々の暮らしを経たのち、
3年間、2人暮らしをしていた。
妹と暮らし始めた最初の頃、
自分で言うのもなんだが、食に関してそれなりによく頑張っていた。
作り置きのごはん、私と妹のお弁当のおかず。
特にお弁当のおかずに関しては、
私が学生の頃に冷食ではなく手作りのおかずに憧れていたこともあって、手作りにこだわっていた。
もちろん、こんなことが長く続く訳もなく、
手作りおかずから、冷食おかずへ、
冷食おかずから、お弁当作りには一切関与しない、という過程を経て、
結局、
「餓死させない程度に食料を蓄えときゃいいや」
という極論に至った。
平日は、
豆乳、豆腐、納豆(妹専用)、たまご、キムチ、冷凍ごはん、ヨーグルト、レトルトカレー、ツナ缶、乾麺
を最低限常備しておき、それに加えて野菜、果物、お肉を、その時の気分や予算と相談しながら組み合わせていく。
週末には、妹に1000円を支給し、
好きなものを買うのもよし、自分で作るのもよし、
という、食事を作る行為をほぼ放棄するルーティーンに落ち着いた。
いちおう、週に1回は手作りのごはん(カレーや鍋の頻度がずば抜けて高い)も作っていたが、
満足がいくほど、食事の用意をしてやれないことに、申し訳なさは常に感じていた。
私は仕事で疲れている。
必要最低限の栄養(タンパク質重視)は取れるだろう。
自分1人の食事くらい自分で用意してくれ。
足りない分は、お小遣いとかで自分でなんとかしてくれ(^o^)
心の中で、自分が食事の用意をできない言い訳を何度もした。
妹も妹で、私の心境を知ってか知らずか、
冷蔵庫の中の限りある資源で、自分でレシピを調べてはごはんを作っていたりした。
ちなみに妹は、私が食事を毎日用意しないことについて、文句の一つも言ったことがない。
(あ、今日もご飯作っていないから、流石に機嫌悪いな、すまん…。)
と思うことは何度もあったが、それを実際に不満として私にぶつけてくることはなかった。
結局、ずるずるとモヤモヤし続けて、妹との暮らしも終わりを迎えることとなった。
妹は他県の大学に合格し、進学を機にひとり暮らしとなったため、
必然的に私も一人暮らしとなった。
「あぁ、やっと食事を用意してやれない罪悪感から解放されるんだ」
とほっとする一方で、
「このまま終わってしまったら、後悔だけが残ってしまいそうだ」
というモヤモヤも感じていた。
そこで、
妹と暮らす最後の1か月、たった1ヶ月の間だけでも、手作りの料理を用意してみることにした。
できる限り… あ、おいしかったかどうかは別で。
多分、この先はもう一緒に住むことはない。
保護者として、姉として、今まで十分に接することはできなかったけれど、
私たちが大好きなごはんを通して、
手作りのごはんを食べられるうれしさを、温かさを、味わってほしかった。
これから先、嫌なことがたくさんあっても、
ごはんを食べることで心が落ち着くことを知って欲しかった。
一人暮らしをしてみて、初めて気づく、
人にご飯を作ってもらえる有り難さ、人にご飯を作る大変さに、
気づいて欲しかった。
妹と離れて暮らすようになって、早1年。
私の気持ちが届いたかどうかはわからないが、
彼女はカフェのキッチンで一生懸命働いている。